13: ナイツテイル〜へぼ愛しい二人の騎士物語
こんにちは、ハルコ。です。
お友達からお誘いがあり、9月26日夜公演を観劇してきました。
3年ぶりの再演で私は未見でしたが、観て良かったと思います。
実はこれ仲間うちでは評価が賛否両論ある作品なんですが、私は「面白い」に1票投じたいと思うので、私なりに楽しかったポイントを書きたいと思いました。
大阪公演は残念ながら初日から13日まで公演中止となり、後半しかなかったのですが、無事に千穐楽を迎え、まだまだ東京、福岡と続きますので、もし行ける範囲で迷っていらっしゃる方は、是非1度観て頂きたいと思います。
そして語り合いたい(笑)
ネタバレになるかと思うので、未見の方はお気をつけください!
前提として私が若いころ古代ギリシャ時代の大ファンだったと言うことです。←そこか
そこここに感じられる古代ギリシャ音楽の要素にすっかり興奮してしまいました。たまたまかもしれませんが、和楽器って古代ギリシャの雰囲気に合うんですね...!!
舞台は古代ギリシャの都市国家アテネ(アテーナイ)とテーベ(テーバイ)、アーサイト(堂本光一)とパラモン(井上芳雄)はテーベの王の甥で従兄弟同士で親友でもあり、エミーリア(音月桂)はアテネの大公シーシアス(テセウス:岸裕二)の妹であり、それにアテネの牢番の娘(上白石萌音)の4人が主となって物語が展開されます。
※この時代とアテネ・テーベの抗争とは少し合わない気がしますが、そこはどうでもいいことにします
※古代エジプトにもテーベという都市があるんですが、この場合はギリシャの独立都市国家のテーバイのことだと思います
正直言ってドラマシティでも成り立つのではと思うほどあっさりしたストーリーですが、キャストから舞台美術からオケからアンサンブルまでこれでもかと盛り込んで力技で帝劇作品に仕上げた感はある。
が、エリザベートでも「なんだこりゃ」って思う方もいるでしょうし、牢番の娘の真実を知ったエミーリアに「お前は今までどこを探してたんだ」とか、「(牢番は)生きてたのか!」とかツッコミどころは山ほどありますが、ある意味ここまで簡単なストーリーで思いっきり豪華に作りこんでるというオーソドックスなミュージカル手法は、むしろ近年あまり見ない気がするので、ああグランを観たって気がします。←そうか?
この舞台の醍醐味は光一アーサイトと井上パラモンの2人のコンビネーションで舞台の屋台骨を担っていることで、一貫して温かい物語になってることだと思います。
私は今までこういう芳雄くんを見たことが無かった。
自称日本一帝劇の0番が似合う男・井上芳雄という人は、その名に恥じずいつも1人で舞台を背負ってきた。
Wキャストの時でも同役と一緒に出るわけではありませんし、板に立つ時は並び立つものなき孤高の絶対的プリンシパルとして存在していて、元々その方が本領発揮できるタイプだと思うけれど、この舞台ではその重荷を2人で分け合ってしかも心から楽しそうなのが伝わってくるのは大変貴重なものを観れた気がしました。
そして芳雄くん信じられないくらいイケメンだった。
私の中に井上ルドルフがフラッシュバックしてきて頭が忙しかったです。
こんなイケメンって思ったの久しぶり...!!←いや今までもイケメンだったんだけどこんな押し出して来なかった気がする
本当に愛らしくて瑞々しい若さに溢れた、イケメン芳雄たっぷり堪能しました!!
やはり舞台に立つ井上芳雄はトップスターとしか言いようがない。
キャラクターはある程度当て書きされてると思うんですが、相手を呼び合う時「愛する従兄弟よ」とか「大切な従兄弟どの」とかいちいち枕詞がつくんですが、本当に心から出ている言葉のようで、この2人がプライベートでも親しいことは近年で周知のこととは言え普段からこういう感じなのかな?と想像してしまって微笑ましく感じます。
これは他の人のセリフにもあってシーシウスもいちいち「美しいヒポリタ」「麗しの妹よ」とかあるのがなんだか古典らしく楽しくて、「次はなんて呼ぶんだろう」とワクワクして待ち構えてる私がいました(笑)
ディスってる訳でなく怒らないで欲しいんですが、堂本光一さんは本当に小さい方ですね!?
私はコロナ前、またまたお誘いでSHOCKを1度同じ梅芸で拝見したことがあるんですが、周りも割と華奢なアンサンブルで固めていたのか、あの時はここまで小さいと思っていませんでした。
お顔立ちも小さく整っていて、(上白石萌音ちゃんを除くと)あのキャストの中ではまるで女の子のようなサイズ感で、井上芳雄さんとの向き合った時の体格差に驚愕を覚えました。
芳雄くんがしろたんみたいな巨人()に見えるぞ...!?
しかしアーサイトは大きく割と荒々しく動き回り興奮するとすぐ食ってかかり、まるでキャンキャン吠える気の強いオスの小型犬みたいに見えます(頭にリボン付きのやつ)。
そしてパラモンはまるで大きな赤ちゃんです。
「さてはパラモン、お前バカだな...!?」と何回思ったかしれません。
詳しい年齢設定はわからないのですが、当て書きなら多分アーサイトとパラモンは同い年でしょう。
でも何となくアーサイトは兄のように振る舞い、パラモンは弟のようにも見えます。
ちっさい兄とでっかい弟のやり取りは内容がうっすいのに(こら)本人たちは至って真剣で、本当に少年のようで、正直なところ観る前は「40過ぎてて大丈夫なのか?」と思ったりしたのですが、まだまだ2人ともプリンスでいけるわ。
さすがジャンルは違ってもそれぞれ舞台上のトップを走り続けた人たちなんだな。
そして井上くんは、弟なんだけど得意な歌では光一さんをしっかりささえ、良さも引き出している。
芳雄くんの上手さとオーラは流石だなと思うのは、ソロはもちろんのことデュエットやコーラスでも芳雄くんが入ると一本芯が通ったようになってグッと言葉が入ってくること。
触れるのが難しいところですが、光一さんと上白石萌音ちゃんのミュージカル性について触れておきます。
現時点で2人をミュージカル俳優と呼ぶのは難しいことです。
しかしそれを「下手」と呼ぶのとは違うと思います。
特に光一さんはスターシステムの頂点にいる1人ですから、自分に出来ること出来ないことを冷静に把握した上で徹底的に稽古をやりこんでくる頭のいい人だと思います。
言わゆるミュージカル的な歌やダンスではないですが、現に音を外して来なかったし、聴きづらい見苦しいという違和感も大きく感じなかったし、単に「違うジャンルを突き詰めた人なんだな」と思いました。
なのにこのジャンルの世界観にチューニングを違和感ない程度にはあわせてくることが出来る。
ここまで来ると観客の好き嫌いもあると思いますので、そこは割り切って今後もご自分の目指す方向性で高めて行って下さっていいと思います。
が、私としては現時点では相手役次第だなと思っています。
今回は1番の相手役が芳雄くんであったこと、2人の相性がハチャメチャに良いと言うことが成功の1つかもしれません。
むしろどっぷりミュージカルの手法にハマらないほうが面白い人かもしれない。
萌音ちゃんは本当に芝居の上手い人でした。スっと胸に沁みてくる鈴を振るような音楽的な台詞回しはキャスト中でもずば抜けていて、ずっとセリフを聞いていたいような、この衝撃は私が濱田めぐみさんや高畑充希ちゃんを初めて観た時の感覚に近い。
歌は上手いのですが、まだ完全にミュージカル歌唱になっていないところも多くて、それでも2幕に入っていくにつれて違和感は無くなってる。
「はやウタ」という番組で披露した「牢番の娘の嘆き」と言うソロナンバーは劇中でもポップスに近いので、本当の実力は伝わりにくいのではないかと思います。
そしてダンスが上手で驚きました。
これは絶対なにかやってたな、と思える足さばきでした。
まだ23歳と若く、今後舞台を重ねて行けばミュージカル女優として花開くかもしれないのですが、何せ彼女は今をときめく人で次回の朝ドラも決まっているほどですし、今後もストプレはあってもミュージカルの作品に恵まれるのかなぁとそこは疑問に思います。
身長もとても小さいので、型のある翻訳もののミュージカルにいくつも合う役があるかどうかもわからない。
彼女でなければ出来ない、そういうスター街道を行く人になるのだろうと、
いつか「ウェイトレス」のようなミュージカルをやってくれたらいいなと思います!
音月桂さんは何も心配ない安定さ。
まさにミュージカル女優の典型で「美しいエミーリア」と呼ばれるのにピッタリ。
悠々と歌う声もセリフ回しも安心して聴けます。
優美でおだやかで時々カッコイイ()
アーサイトやパラモンよりカッコよく見える時がある。(さすがです)
私はフランケンシュタイン以来ですが、なお一層良くなった気がしました。
そう言えばエミーリアと牢番の娘とのやり取りは、アーサイトとパラモンの関係性と似ているかもしれませんね。
シーシアス(テセウス)の岸裕二さんと美しいヒポリタが島田歌穂さんで震えがきたわ。
この2人だけが実在される(?)と言われる人物で「真夏の夜の夢」観に行く人はここテストに出ますからね!(笑)
岸さんがこんなカッコイイ役をするの久しぶりだわ...。
うれしい...。
島田歌穂さんはパッと出てきただけですぐ気が付きました。
あの華やかさ、流石だと思います。
今でも舞台に出ると「美しい」と思える姿を維持し、一声聴くと誰だか思い出せる個性、正直言ってこんなに長くプリンシパルでいるのも大変だろうと想像できるけど、今の方が脂が乗ってるように思えるのは、私自身も励みになる想いでした。
それは大澄賢也さんにも感じます。昔より今の方が魅力的でいい。でもここまで来るのにどれだけ稽古したんだろうと考えると気が遠くなりそうです。
彼らを見ると努力は決して裏切らないんだと思えてきます。
大澄さんを始め、この舞台の最大の見所はダンスと言えると思います。
特に1幕のラストから2幕の最初にかけての狩のシーンは圧倒されます。
馬に乗った狩に興じる人々の動きもそうですが、雄鹿と雌鹿たちの動きは生命力に溢れて美しく、特に雄鹿の力強い美しさに目を奪われました。
かなりバレエが上手な人なんでしょうけど、爪先の美しさ、パの処理の正確さで本当に森の生き物として神聖なものを感じます。
ダンスがお好きな方にもあの鹿たちの動きを見てほしいですね!
このメンバーで再再演が出来るかどうかわかりませんけど、次回があれば、あのへっぽこ可愛いアーサイトとパラモンと美しい鹿たちを観るためだけでも行きたいなと思っています。
本当は直前にレ・ミゼラブルを観に行く予定だったのですが、コロナ禍に巻き込まれ全公演中止になり、それは私にも相当な衝撃を与えました。
ナイツテイルも大阪前半が中止が決まり成り行きを見守っていたのですが、後半が無事に開催となり、観られた巡り合わせに大きな喜びを感じました。
この2年足らずの間に、観劇の楽しみ方も想像もできない形に変わり、それに伴う私自身への負担も大きくなっているのも感じています。
まず無事に劇場に辿り着き観劇に漕ぎつけるのがこんなに大変になるなんて誰が思っていたでしょう。
終わったあとも一抹の不安と罪悪感をぬぐえないことは否めません。
決して無理はしまいと思っていますが、その分観ることが出来た1つ1つが宝物のように美しい記憶として刻まれています。
これからも素敵な記憶が増えますように。